<臘梅(ろうばい)>

 臘梅という植物を御存じですか? 

 初めて見た時には生花だとは思えませんでした。他の梅と同じく、葉に先立って 花だけ先に開くせいもあるのでしょうね。細く乾いた枝に油紙で作ったような薄い 花弁だけがぽちぽちとついているだけなんです。普通の梅の円い柔らかな花弁と 違って先の尖ったぱりぱりした花弁は、植物らしい瑞々しさがまるで感じられませんでした。これが葉のひとつでもついていればまた違った印象があるので しょうがそれもなく、人工的な匂いさえするような花でした。  

 花だけに焦点を当てるならばなんてことない花です。半透明の花弁が少し奇異であることを除けば、たとえ咲いていても目につくことはあまりないでしょう。    

【素心臘梅】(写真:『おしゃべりな部屋』内「植物園」より許可を頂き掲載)

 しかし臘梅がその存在を誇るのは、並ぶものないようなその香りです。梅の芳香とも趣が違う、甘く強い香りですが、決して下卑た甘みではありません。その香りが届けられて初めて、花開いたことに気付かされます。

 雪が降るような寒い寒いこの時期、椿など、他にも咲く花はあれど香りを届ける花はそう多くありません。臘梅の艶やかな香りは、それこそ一面 に広がります。 馴染みの深い梅と(花の数などから)単純に比較しても、ひとつひとつの花が放つ香りはかなり強いのでしょう。寒梅でさえ暫(しば)し待たなければならないこの 時期、庭に一本、臘梅があるだけで何か華やいだ気分にさせられます。

【臘梅という名】

 一般に、臘細工のようなつやと透明感を持った黄色い花弁から臘梅という名がつけられたといわれています(故に「蝋」の字を使われることもあります)が、異なる説も存在します。

  12月の異称に臘月というものがあります。これは古代中国で臘祭という 狩猟祭が行われる月であったことからきた名称(または日。臘日は大晦日の意) だといわれています。臘月または臘日は猟が変化したものです。その臘月に咲く花 だから臘梅だという説もあります。歳時記などでは普通「臘」の方を使用していますから、臘月説の方が有力なのでしょうか。 

 別名唐梅、南京梅。乾いた容姿に反し強い麝香のような香りを持つ梅に相応しい名前です。  


メモ

【季節】冬(晩冬)

【異名】唐梅・南京梅・*檀香梅・狗蠅(くよう)梅・淡黄梅

 *檀香梅以下は古名

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