きのこ

きのこの呼び名

日本ではきのこのことを、薬効のある高級食材、また秋の味覚として古くから親しんできました。きのこという呼び名は、森の中の朽木や切り株などに発生しているもの、『木の子』からそう呼ばれるようになったようです。

また、ある決まった種類の樹木に発生したものを『えのき茸』『まつ茸』『しい茸』などと、その樹木に結び付けて呼称されるようになったものもあります。

きのこの食用部

きのこは菌類に属し、胞子で子孫を残します。

また、細胞に葉緑素がなく光合成して自力で生育することができないので、朽木や落ち葉、木の根などに菌糸を張って栄養源として成長します。

その菌糸の集合体が子実体と呼ばれる胞子を作り出す器官で、一般的にかさと柄と言われるきのこの食用の部分はこの部分にあたります。

きのこの栄養価

それぞれの種類によって含まれる成分は違いますが、すべてのきのこに共通することは、低カロリーであること、水分・ビタミン類(B1・B2・D・ナイアシン・エルゴステロール)・ミネラル類(カリウム・リンなど)・食物繊維などの成分が多く含まれていること、そして、昨今一番注目されているのが、βグルカンによる抗がん作用があることです。

栄養価別の効果

  • ビタミンB群は体の基礎代謝を高め、体の疲れなどを取り除く効果があると言われています。
  • ビタミンDは骨の強化に効果があます。
  • リンは骨や歯を構成する材料になり、カリウムは高血圧を予防します。
  • βグルカンはきのこ全般に含まれている他糖体で、免疫力を高め、抗ガン効果があります。
  • 食物繊維は体の中のコレステロールや有害物質を体外に排出する効果があります。
  • ナイアシンは皮膚炎や頭痛の予防に効果があり、平茸などに特に多く含まれています。

きのこの旬

きのこの時期といえば秋とイメージしますが、きのこ全般と考えると一年を通して見る事ができます。野生のものは、気温と湿度に発生に大きく影響を受け、6月~7月または9月~11月までの雨の降った後などに多く発生するので、旬といえば夏または秋ということになります。また栽培されているものは、温度や湿度を人工的に管理しているので、一年通して出荷することができます。

きのこの種類

日本で自生しているものは数千種類あるといわれています。

そのうち4~5百種類が食べられるもので、市場に出回っているものは大体15~20種類前後です。その中で実際に市場に流通しているものは松茸以外ほとんどが栽培のきのこです。

きのこには朽木や落ち葉などを栄養源として成長する腐生性きのこ類(なめこ、えのき茸、ぶなしめじ、椎茸など)と生きた植物の根などと共存しながら成長する菌根性きのこ類(ぶなしめじ、松茸など)と昆虫や植物、きのこに寄生して成長する寄生菌類(冬虫夏草など)と大きく分けて三種類に分類されます。

ぶなしめじ

キシメジ科シメジ属に属し、本しめじやしろたもぎ茸などで売られているものは、すべてぶなしめじのことです。

ビタミンB2が多く含まれていて、動脈硬化などの成人病に効果があるとされています。

『香り松茸、味しめじ』と言われ、昔から珍重されていたきのこですが、菌根性きのこ類に属し、人工栽培が難しく、量産できるようになったのは、ごく最近になってからです。

傘は半球から饅頭型で、灰褐色にかすり模様。何本かの柄が集まって一つの株になります。肉質は緻密でしっかりとした歯応えがあり、風味も味も淡白で、何の料理にも良く合います。

えのき茸

えのき茸はキシメジ科に属し、晩秋から春先にかけて広葉樹の切り株や朽木の上やその周辺に群生しています。自生のものは栗色でかさの大きさが4~5センチもあり、市販されているえのき茸からはとても想像できない形状をしています。(むしろ自生のものはなめこに類似していて、"なめすすき"などと平安時代には呼ばれて食されていたようです。)

市販のえのき茸は、きのこの性質である、暗所で成長すると傘が小さく、軸が長く伸びる性質を利用して、薄暗い栽培室で、白く、軸の長いものをポット栽培などで栽培しています。

軸の部分は、しゃきしゃきとした歯ごたえがあり、その長い軸の部分に食物繊維が多く含まれています。

又、ビタミンB1・B2、カリウムなども比較的多く含まれていて、疲労回復・便秘・ガンや成人病予防に効果があります。

ひら茸

スーパーの店頭などで『○○しめじ』や『しめじ茸』として売られているきのこがありますが、これはひらたけという種類の人工栽培用のきのこです。

基本的に『ぶなしめじ』とは別のもので、菌会社や生産者が好んで呼称していることが多いようです。(ちなみにぶなしめじは、たもぎたけという種類のきのこです。)

ひらたけの日本での歴史は非常に古く、『今昔物語』や『平家物語』にも登場してきます。また当時、修行僧の間ではマツタケより珍重されたそうです。

栽培量では、一位が岐阜県、二位が山形県(平成12年)。

食味は淡白で、香りもおだやかな為、炒め物や鍋料理の具などに使用される他、保存を兼ねたオイル付けや、パスタ料理など、和食、中華、洋食全ての料理に使用されています。 ちなみに海外では『オイスターマッシュルーム』と呼ばれています。

ひらたけは必須アミノ酸のリジンや食物繊維、ビタミンB2などが、他のきのこに比べて、非常に多く含まれています。

効能としては、動脈硬化や高血圧の予防。口内炎や肌荒れ、胃腸疾患の予防。

なめこ

モエギタケ科スギタケ属に属し、表面の独特のヌメリが特徴的なきのこです。呼称名も、表面全体がヌメリに覆われているので"なめこ"と呼ばれているようです。

日本や台湾に古くから自生していて、ブナ林の朽木や埋れ木などに秋から冬にかけて、密集して生育します。

なめこの特徴である表面のヌメリですが、ムチンという食物繊維の一種で、たんぱく質や脂肪の消化吸収を助け、粘膜を保護して損傷を防ぐ効果があります。

特に最近では水溶性の食物繊維が大腸がんの予防に効果を発揮すると注目を浴びています。

袋にパックされたなめこは、一度水洗いをされていますのでそのまま使用できますが、水洗いをするときは、表面のぬめりを余り落とし過ぎないようにしてください。

なめこの選び方ですが、かさが丸く硬くて、軸の太いものが良いものとされています。又、表面の色は元々褐色ですが、日がたつと黒っぽく変色しますので、そういうものは避けるようにしましょう。

まいたけ

舞茸はサルノコシカケ科に属し、全国の山深くにある老巨木にわずかに自生するきのこで、見つけるのが大変困難だったため、『幻のきのこ』と呼ばれていたそうです。運良く見つけた人が舞うほど喜んだので『舞茸』と命名されたということです。

ここ20年位で人工栽培が可能になり、現在1年を通して安価で流通していますが、人工栽培の技術のない昔は、食卓に上ることなどありえない高級食材だったそうです。

舞茸の特徴として、香り・味・歯ごたえなどが上げられます。炊き込みご飯や煮物などの和食や、バター炒めなどにするとおいしく食べられます。

また現在、舞茸の薬効効果が非常に注目され始めています。特に、β―グルカン等の多糖体が人間の元々持っている免疫力を高め、三大成人病の予防効果(特に癌予防)や抗エイズ効果があると言う研究結果が出ているようです。

その他の効果として、ビタミンB2やD2が骨を丈夫にして皮膚や髪の老化防止。ナイアシンが血圧を安定させ、食物繊維が食物の脂肪吸収を抑え、胃腸障害を解消します。

あわび茸

あわび茸は中華料理で使われる高級食材の一つで、調理したときの風味や歯応えごたえがあわびに似ているので日本では、『あわび茸』と呼ばれています。

日本で出回っているあわび茸は平茸の栽培品種で、黒あわび茸や白あわび茸、大平茸などがあります。(エリンギの事を白あわび茸と呼ぶこともあります。)

ビタミン(B1・B2・D)、ミネラル(鉄分・カリウム・リン・ナトリウムなど)、食物繊維とβグルカンを非常に多く含んでいます。摂取されたβグルカンは血中に溶け込み、体内の免疫力を高める働きがあります。

エリンギ

シメジ科ヒラタケ属のきのこで、ヨーロッパや中央アジア、北アフリカの草原に自生しています。(ちなみにエリンジウムという植物と共生することからエリンギと呼ばれています。)

日本には1993年頃に台湾から菌が導入され、現在では日本や中国・韓国での養殖が盛んに行われています。

しゃきしゃきした歯ごたえと独特の香り特徴で、和洋中どの料理にもよく合います。

また、エリンギはビタミンDやビタミンB1・カリウム・食物繊維と、糖質などが他のきのこに比べて多く含組まれています。特に糖質はトレハロースを多く含んでいて、骨粗しょう症の改善に効果があります。

マッシュルーム

ハラタケ科のきのこで、アメリカ・フランス・中国などで栽培され、世界で一番消費されているきのこです。

呼び名も、アメリカでは『マッシュルーム』、フランスでは『シャンピニオン・ド・パリ』アジア圏では『作茸(ツクリタケ)』など様々です。

グルタミン酸(旨み成分)が多く含まれていて、独特の風味としこしことした歯応えが特徴的で、ホワイト種の他に、肉質の締まったブラウン種もあります。

鮮度の見分け方ですが、色のなるべく白く、表面のつるつるしているものを選び、傷や変色をしているものはなるべく避けるようにしましょう。

やまぶし茸

サンゴハリタケ科サンゴハリタケ属に属し、山伏が衣に付ける丸い飾りに似ているので、この名前がつきました。

きのこの形状は中央部から白い針のように先端部が伸びていて、その針状の部分に、胞子が垂れ下がっています。

クヌギやクルミなどの広葉樹の樹幹や切り株に発生します。日本では最近まであまり馴染みのないきのこでしたが、最近の研究結果でガンの予防に大変効果があることと、痴呆症改善等に効用がある事が紹介され、注目を集めています。

フレッシュの物の他に、乾燥のもの市販されています。

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