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田口さん

駿東郡元長窪地区

四ツ溝柿

四ツ溝柿

静岡県東部愛鷹山麓原産の完全渋柿で、現在静岡東部地区を中心に神奈川や山梨の一部地域でも栽培されています。

果実の特徴は、渋柿の中でも比較的小粒の部類に入り、頂端に向けてやや尖っています。また、果実側面四方向に溝があるので「四つ溝柿」と呼ばれるようになったとされています。

四ツ溝柿の現在

渋抜きをしたものは、糖度も高く、果肉も緻密で上品な味わいがある四つ溝柿ですが、果実も小さく、完全渋柿で、他の柿と並べると見劣りしてしまうことと、渋を抜いた後の果実は大変傷つき易いこと、出荷(収穫)期間が極短期間であることがウイークポイントとなり全国的に余り知られることがなっかたようです。しかし、現在では栽培方法の確立や輸送・保存の技術も当時と比べて格段に進歩してきているようです。

四ツ溝柿の歴史

静岡県愛鷹山麓原産の完全渋柿

来歴は不明ですが、その昔愛鷹山麓にいた『きこり』が、林の中に自生していた柿の木を山から持ち帰り、庭先に植えたのが四つ溝柿の始まりという言い伝えがあります。

その昔、農家の庭先などの自家用果樹として主に栽培されていた四つ溝柿は、昭和30年代頃から換金作物として注目されはじめ、稲作や畑作の複合作物として駿東郡長泉町や富士宮市などで栽培されるようになりました。

特に長泉町では1985年に集団的な開園も行われ、『するがの柿』という名称にて特産品として栽培・出荷されているようです。また町内に分布しているものの中から大果で着色の良い樹が選抜され、昨今栽稙される樹木はこれらから繁殖が行なわれているようです。

駿東郡長泉町元長窪にある四ツ溝柿の古木


四ツ溝の古木

写真は元長窪古谷洋氏所有の四つ溝柿の古木。

画像では判りにくいですが、樹齢130年以上の堂々とした大きさに圧倒されます。

ちなみにこの四ツ溝柿の巨木が四ツ溝柿のルーツではないようです。

※参考文献 新編原色果物図説 養賢堂出版

栽培過程

来シーズンに向けて

収穫が終了した12月過ぎから、翌シーズンに向けての作業が始まります。

まず枝の剪定を行ないます。これはその年の収穫を良くする目的があり、枝先端部分の切除や、古い枝や競争枝の切除を行なっていきます。

また、柿の木の表面の皮を専用工具を用いて剥いでいきます。これは『粗皮削り』といい、病害虫が皮の中で越冬をすることを防ぐ為に、やはり冬の時期に行なっていきます。

その後、下草の伸びてくる春先から下草処理の行なっていきます。なるべく薬品などを使用しないように、柿の木や土壌への配慮をしているようです。

環状剥皮
環状剥皮

根から養分を吸い上げ、葉で光合成を行なった後、その養分が根から地中に戻るのを防ぐ為に幹部分の表皮に溝を入れます。雨量の多くなる梅雨の時期に行ないます。

枝の剪定
枝の剪定

柿の栽培の難しさのひとつに、豊作と不作が交互に現れる『隔年結果』という現象が上げられますが、これらをコントロールするための、枝の剪定作業や、摘蕾・摘果・葉の剪定などは欠かせません。

実の結実
実の結実

花が完全に落ちた後、果実の成長が始まります。

ちょうどへたの下に小さな果実部分が見えます。この位の時期からスリップスやヘタ虫などの病害虫に気をつけます。

枝の補助
枝の補助

果実がある程度成長するころに、木の間の支柱から枝を紐や針金を使って吊っていきます。

これは果実の重みで枝が折れてしまわないようにする為と、風で枝が果実の表面を傷めないようにするため行ないます。

収穫まで1ヵ月ほど
収穫まで1ヵ月ほど

随分柿らしい大きさになってきました。(四つ溝柿独特の溝が柿の表面に確認できます。)

果実周辺の葉を取り除くのは、果実表面の『擦れ』防止と、果実に太陽光を多く当てるために行います。

太陽光
太陽光

畑に反射シートを敷き詰め、満遍なく柿に太陽光を当てています。これは柿の色付きを良くする為に行なっているようで、生産者さんによってはこのような栽培方法をおこなっている方もいらっしゃるようです。

黄色ナトリウム灯
くだもの情報

カメムシの嫌う色調のライトで園外から飛散してくるカメムシから農園を守ります。

このような小さな努力を行なうことで、使用する農薬を減らすことができます。

脱渋の方法

柿の渋

柿渋の主成分は「タンニン」。紅茶や緑茶に含まれている「渋」も同じ「タンニン」です。「タンニン」には水溶性と不溶性のものがあり、この水溶性のものを不溶性に変化させることで、食したときの渋味を感じないようすることができます。この作業を渋柿に施すことを「渋抜き」と呼び、「ガス抜き」・「湯抜き」・「焼酎抜き」などの方法が一般的に行なわれている「渋抜き」の方法です。

ガス抜き

炭酸ガスを使い、渋抜きを行なう方法で、果実の温度を約20~25℃に保ち、そこへ炭酸ガスを充填して3~4日ほど放置しておきます。

市場などで一般的に流通している抜柿のほとんどがこの方法がとられています。これは短期間で渋抜きが完結するのと、比較的日持ちが良いからだそうです。

湯抜き

昔から伝わる方法で、40℃位の温湯に塩を入れ、その中に12~24時間ほど柿を浸けて置くと渋が抜けます。(そのときの気温や柿自体の硬さなどで湯温や塩の量は若干変わります。)

個人の方で渋抜きを行なうときには、容器やビニールに渋柿と塩・ぬるま湯を入れ、40~50℃ぐらいのお湯を張った浴槽に入れて一晩置いておくと渋が抜けます。この方法は「湯ざわし柿」と呼ばれているそうです。

焼酎(アルコール)抜き

30~40%ほどのアルコール(焼酎などを使用。)を渋柿のヘタ部分に塗布し、ビニール袋に入れて密閉し、3日~1週間ほど経つと渋が抜けます。この方法は、柿の輸送中の時間を利用して渋を抜くことができます。

この他に柿の渋を抜く方法で、加熱乾燥を行なって渋を抜く方法「加熱乾燥」や、柿を完熟させる方法「熟し柿(完熟)」、皮を向いて風にさらす「干し柿」などの方法があります。

収穫と脱渋作業

収穫時期
収穫時期

収穫は毎年10月末~11月末にかけて行なわれます。

今年は夏時期の日照時間も多く、雨による水分維持にも恵めれた為、糖度も高く、収穫量も期待できるようです。

出荷時の大きさ
出荷時の大きさ

最近では栽培方法の工夫により、大玉の栽培が可能となりました。(写真は大体2Lサイズ位)

四つ溝柿の収穫作業は正味1ヵ月という短期間でで終わらせる為、この時期はかなり忙しいようです。

選果作業
選果作業

収穫してきた柿は選果機に入れて、M・L・2Lの基準で選り分けていきます。

選果の基準は重さで、Mが90~110g・Lが110~130g・2Lが130g以上となっているようです。

液化炭酸ガス
液化炭酸ガス

一般的に行なわれている脱渋の方法で、炭酸ガスによる『ガス抜き』に使用される液化炭酸ガス。

脱渋する柿の量や気温によって炭酸ガス量を変えるために、それを計測することができるようにはかりに乗せられている。

『ムロ』の用意
『ムロ』の用意

炭酸ガスで脱渋を行なう場合、ビニールシートなどを使って『ムロ』を作ります。その、作業棟の基礎に写真のような溝を切ってあります。

写真のような場所がニ拠点あり、この上で一回に0.4~0.7トンの脱渋が3日間かけて行なわれていきます。

『ムロ』の用意(2)
『ムロ』の用意(2)

左写真の溝の上にビニールシートを被せていき、上写真のように地面との隙間を丁寧に塞いでいきます。(溝の部分には水を満たしておきます。)

この作業は『ムロ』に充填した炭酸ガスが外に漏れないようにするために行なっています。

『ムロ』の用意(3)
『ムロ』の用意(3)

選果した柿を20kgづつコンテナにいれ、先ほど用意した溝の上に綺麗に整列して配置していきます。

写真のように扇風機を置く事で、『ムロ』の中の炭酸ガスがムラなく均一の濃度になるようです。

『ムロ』の用意(4)
『ムロ』の用意(4)

左写真の状態のものの上に、ビニールシートを被せ、上部に空いた穴より液化炭酸ガスを内部に流し込みます。

炭酸ガスは空気より比重が重いので、『ムロ』の間から炭酸ガスが逃げてしまわないように注意を払います。

保存用冷蔵庫
保存用冷蔵庫

四つ溝柿は脱渋した後、基本的には常温保存で3日、冷蔵保存で1週間、真空保存で1ヵ月、真空冷蔵で2ヵ月しか保存することができません。

写真は作業棟に設けられた冷蔵庫。

簡易脱渋
簡易脱渋

簡易の脱渋方法。

FRPの容器に約50kgの四つ溝をいれ、炭酸ガスを容器に満たしておきます。口にはビニール袋を被せ炭酸ガスが漏れないようしておくと、3日ほどで脱渋が完了します。

アルコール脱渋
アルコール脱渋

アルコールを使用した脱渋も平行して行なっていました。

アルコールはフルーツ用のアルコールを使用し、アルコールの度数を三十数℃に設定して使用し、5日~1週間かけて脱渋が完了います。アルコール脱渋の方が商品劣化が遅いようです。

真空パック詰め
真空パック詰め

真空パックを使用しての出荷パッキン詰め作業。(四つづつ入れておく。)

真空パックして出荷すると品質劣化が遅くなり、常温で1ヵ月、冷蔵保存すると2ヵ月はそのままの状態を保つことができるそうです。このように品質を長期間保つことが今後の課題となっているようです。

箱詰め出荷作業
箱詰め出荷作業

出荷用5kgの箱に、脱渋作業の終わったものを詰め共同販売用に出荷しています。

出荷形状は、5kgの箱と右上の真空パック詰めのもので、比較的人気も高く、総出荷量も多くはないので、品薄の状態が続いているようです。

四つ溝柿の形状
四つ溝柿の形状

脱渋作業の終了した四つ溝柿。

写真左から果実下部、果実側面、果肉部分の断面。果肉を割ってみると種がなく、食用部分が多いことが分かります。

四ツ溝柿栽培の課題

一年間手をかけて栽培してきた四つ溝柿も、実を結実して収穫ができるのは10月末から11月末の1ヵ月だけで、この時期は本当に忙しくなります。

収穫時期が限られている中、この柿を長期保存しておけないものかと色々思案して、冷蔵温度や脱渋の方法なども日々研究を重ねられていると田口さん。

脱渋をして食べるのが一番おいしい食べ方ですが、長い間保存して置けない四つ溝柿を田口さんは冷凍しておくそうです。そして食べるときに冷凍しておいたものは、ちょうど「シャーベットのような状態」で食べることができるので、食感も楽しめるとのことです。

出荷カレンダー

出荷カレンダー

※ 出荷時期はあくまでも目安です。

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