なす

なすの歴史

原産地はインド東部で、紀元前5世紀には中国に伝えられ、5世紀ごろにはすでに中国、アラビヤ、アフリカなどで栽培されていたようです。

ヨーロッパには約13世紀頃に伝わり16~17世紀にはヨーロッパ各地で栽培されるようになり、現在では特に気候の温暖な地中海沿岸地方を中心に栽培されているようです。

日本には4~6世紀に中国から伝えられ、現在までの長い期間の中で、栽培されてきた地域の気候にあった品種がそれぞれ発達しました。一般的に東北、九州では長ナス、関西、北陸、甲信では丸ナス、関東では千両ナスが主に流通しています。

なすの種類

ナスは花を咲かせたら必ず実になる等、適応能力に優れた植物です。そのため各地方の気候や風土、その土地の好みにあわせて大きさや形の様々なものが作られています。

特に東北地方などはナスの生育に適した気温になる期間が非常に短いので、比較的早く収穫できる、丸ナスや小ナスなどがよく栽培されており、南下するに連れてだんだん長いナスが主力品種として生産される傾向にあるようです。

ちなみに日本で今一番多く栽培されているのが中長型のナスです。

大長なす(オオナガナス)

長さが30センチから、長いもので45センチ近くになる細長いナスです。皮が硬く果肉が柔らかいため、炒め物や焼きナスなどに適していますが、漬物にはあまり向きません。福岡県の博多長なすや庄屋大長、松山長などの品種があります。

中長なす(チュウナガナス)

長さが12~15センチ位で、全国各地で栽培されています。皮が柔らかく、大きさも手頃です。丸ナスと長ナスの中間なので『中長ナス』と呼びます。現在市場で多く出回っている千両ナスもこの仲間です。

長なす(ナガナス)

関西以西と東北などで栽培されている長さ20~30センチ位の細長いナス。実が柔らかく焼きナスや煮物に向いていて、漬物にはあまり向かない。(東北で栽培されているものは、比較的実が締まっていて漬物にも向いている。)『筑陽』『黒陽』などの品種があります。

小なす(コナス)

関西以長さ3~6センチ位で茶せんナスや一口ナスとも呼ばれています。揚げ物や煮物、漬物などに使います。特に茶せんに切って揚げた料理などは有名です。

丸なす(マルナス)

ほぼ球形をしていて、大きいもので直径10センチ位になります。皮が柔らかく、肉質がきめ細やかで比較的締まっていて、煮物や揚げ物などに向いています。京都の加茂ナスは有名です。

米なす(ベイナス)

アメリカ産の品種を日本で改良したもので、ヘタが緑色で種が少ない。果肉が引き締まっていて味は非常に淡白。油との愛称がよく、比較的どんな料理にも向いています。

選び方のポイント

一年中流通しているナスですが、ナスの品質は、花が咲いた後に実が大きくなる間の日照時間で決まります。

日照時間の多い夏から秋に育ったナスが一番おいしく育ちますので、その時期がナスの旬の時期と言えるでしょう。

次のようなポイントで選びましょう。

  • 紫色が濃く表面に光沢があって、ひびや傷のないもの。
  • 他のものと比べてずしっりと重いもの。
  • へたの切り口が新しく、とげが触ると痛いぐらいのもの。
  • へたと果肉との境界線部分の白い所が多いもの。

なすの保存方法

ナスは熱帯地方原産の植物なので低温に弱いとされています。

冷蔵庫に入れて保存する場合は10度前後の温度を保つようにしましょう。(あまり温度の低い所で保管すると低温障害を起こして、表面や種の周りが変色して固くなります。)

また、ナスは切り分けた直前から、酵素の働きで変色してしまうので、なるべく切らずに冷蔵庫で保存し、調理する直前に切るようにしましょう。

なすの食効果

ナスはカリウムの含有量が非常に多く、また多量の水分を含んでいます。

カリウムは心臓や筋肉の機能を調節し、利尿作用があるので、ナスを食べることで体の熱を水分と一緒に体外に放出することができます。

また、ナスの紫色の表皮はビタミンPが多く含まれているので、毛細血管の抵抗力を強化して脳出血の防止や高血圧症を予防することができます。

なすの呼び名

もともと『奈須比』という呼び名だったが宮中の女房言葉の『なす』という呼称名が一般的になったとされています。

実が多くなり進むので『生り進む』→なすとなった。

夏に収穫できる『夏の実』→なすとなった。

など様々な説があるようです。

紫色の色素

ちなみにナスの紫色はアントシアニンという色素で、ナスに含まれているものは特にアントシアニン系ナスニンと呼ばれて表皮の部分に含まれています。

アントシアニンはブルーベリーなどに多く含まれていて、眼精疲労やがん予防に効果があるポリフェノールですので、ナスはなるべく皮ごと調理して食べましょう。

ただ、ナスニンは水溶性なので調理をするときにはなるべく油で揚げて表面から溶け出さないように工夫をして、効率よく栄養価の高いナスを食べたいものです。

ナスニンはその他に悪玉コレステロールを抑え、活性酸素の攻撃を予防して老化やガンを抑える働きを持つといわれています。

ページのトップへ戻る