里芋の歴史
インドからマレーシアにかけての南アジアが原産地。 現在南アジアに存在するタロイモが里芋の原種に近いと言われています。そこから、寒さに適応した品種が中国を経て日本の縄文時代中期に渡来してきました。
古来より稲作とともに最もポピュラーな農作物として栽培されていたらしく、ジャガイモやサツマイモの栽培が本格的に行われるようになった江戸時代まで芋といえば里芋を指していたようです。
ちなみにこの里芋の語源は山に自生する山芋(自然薯)に対して里で栽培されていたのでこう呼称されるようになったとされています。
里芋の旬の時期
一般的には秋から初冬にかけてが旬の時期ですが、それぞれの品種によって若干異なります。一番早く栽培・出荷される石川早生(石川小芋)は大体8~9月ごろが旬の時期にあたり、一般的な土垂は9~10月頃で、セレベスや八ッ頭は12月頃に最も出荷されます。
また貯蔵性も高いので、収穫時期以外の時期でも市場で出回ります。
里芋の種類
石川小芋(いしかわこいも)
土垂と共に、小芋用の品種の代表格。
ちょうど陰暦の8月15日に行う、月見の頃が最盛期になります。皮付きのまま蒸しお供えにする『衣かつぎ』は平安時代の女性の被り物に似ていることからそのように呼ばれるようになりました。
沖縄県石川村が発祥地です。
土垂(どたれ)
関東地方でもっとも一般的に栽培される小芋用品種。
形状は楕円形で晩生の頃のものは細長い。一年を通して市場に出回り、肉質は粘質で柔らかく、煮崩れしにくく、貯蔵性に優れています。
八幡芋(やわたいも)
肉質は地肌が白くきめ細やかで粘質の味の良い里芋。
山梨県竜王町八幡の特産品。
京芋(きょういも)
親芋用品種で地上に頭を出している形状がたけのこに似ているので、『たけのこ芋』とも呼ばれます。
全長は50センチ以上になるものもあります。肉質は粉質で煮崩れしにくく煮物料理に適しています。
表皮は調理する祭に、皮むき機などで簡単に剥く事ができます。一般的に冬の時期に出回ります。
田芋(たいも)
親芋を食べる種類で、田んぼを利用して栽培されます。
セレベス
親子兼用種で、インドネシアのセレベス島から伝えられました。
肉質は粘質でホクホクしていて味もよく、おでんや煮物料理などに使用されます。親芋も小芋も、芽が赤く、赤目とも呼びます。
えび芋(えびいも)
京野菜の一つで、形状が海老に似ていることからこの名前が付きました。 唐芋(とうのいも)を土寄せして特別に栽培されたもので、肉質はホクホクした粉質で、煮ても煮崩れしにくく、特徴的な味わいがあります。京料理の『いもぼう』には欠かせない食材です。
八つ頭(やつがしら)
親子兼用種で、小芋が親芋から分球しないで結合して塊状に生育します。ちょうど結合した芋が八つの頭のように見えるので八頭と呼ばれます。
肉質は粘質でホクホクしていて味もよく、正月のおせち料理に、末広がりの八と、人の頭になるという名前から縁起をかついで良く使われます。里芋の中では高級品として扱われることが多い。
芋茎(赤)
唐芋や八つ頭の葉柄を示し、比較的太くて大きく、皮を剥いて茹で、酢の物や、汁物の具として調理します。
芋茎(緑)
ずいき専用種の「はすいも」の葉柄で、柔らかく独特の食感で、えぐみがほとんどない。皮を剥いて乾燥させ保存食として使用。
芋茎(白)
芋茎の白は『白だつ』という名前で流通しています。
この『白だつ』のだつとは、脱色という意味から来ていて、唐芋などの葉柄がある程度育った段階で、太い部分に紙などを巻きつけ、軟白化させたものや、日の光を遮断した若芽のことをこのように呼称します。
里芋の茎を食する芋茎(ずいき)には青芋茎・赤芋茎・白芋茎の三種類があり、食用にするものを、切り口が蓮のように無数の穴が開いているので、『はすいも』と呼称しています。又、皮を剥いて、乾燥したものを『いもがら』と呼び、煮物料理などに使用します。
上手な皮のむき方
泥付きの里芋の表面をたわしと水で綺麗に洗い落とし、水気を十分とり除き、表面が乾いた後で皮を剥けば簡単に皮を剥くことができます。
手で皮を剥くと、手が非常に痒くなりますが、これは山芋などと同じシュウ酸カルシウムの針のような結晶が表皮近くに多く含まれているためです。この場合、手に酢水か塩を付けておけば防ぐことができます。
里芋の保存方法
里芋は元々熱帯地方で栽培されていたもので、寒さと乾燥に弱く、冷蔵庫に入れて保存すると逆に早く痛んでしまいます。
保存する場合は泥付きの状態のものを新聞紙などで包み、表面を乾燥させないようにして常温で保存することが望ましいでしょう。
また表皮を剥いてしまったものは、できるだけ早く使い切るように心がけ、それでも残った分は硬めに茹で、水分を取ってから密閉容器に入れ、冷凍保存をすると比較的長持ちします。
選び方のポイント
里芋には様々な種類がありますが、基本的に表皮が茶褐色でしっとりといた湿り気があり、なるべく泥付きのものを選ぶようにしましょう。
最初から洗ってあるものは、元のものより風味が落ちていたり、表面が硬化しているものもあるので十分吟味しましょう。
その他、里芋の表面に小芋の付いていた後が傷になっていたり変色していたりするものは、エグミがあり、肉質が硬かったりすることがあるので注意が必要です。
ゆで方のポイント
里芋は、沸騰した鍋の中に入れると表面に近いほうが早く煮えてしまい、中心部に硬い芯が残ってしまいます。基本的に水から茹でるようにしましょう。
表面のぬめりは様々な食効果がありますが料理によっては味を損なってしまうことがありますので、料理内容に応じて塩などを使用して取り除くなどの使い分けが必要になります。